
英語力向上には大きく4つの技能に注目する必要があります。「読む」「書く」「聴く」「話す」ですね。
単純に4つに分かれていますから、英語学習初心者にとってどういった学習が効率的なのか(何から始めるべきなのか)、悩む原因の1つになっています。
まず、必要なのは英文法です。
「コア英文法」からアウトプットにつなげることをコンセプトにした活動をしていますと、
「英文法学習に学校が偏りすぎた結果、日本人のスピーキング力が伸びなかった」
といった声を耳にすることがあります。
しかし、
今も昔も英文法学習の必要性や価値は何ら変わりません!
ただ、英文法の学び方(教わり方)に問題があっただけのことです。
クイズにチャレンジ!
早速ですが、改善すべき英文法の悪い押さえ方を一緒にクイズで確認しましょう。
I gaveの後に続く形として正しいものを全て選んでください。
Hey, where’s my pizza? – Oops, I gave [ ].
(ねえ、僕のピザはどこ?—あっちゃ〜、アヤにあげちゃったよ)
(a) the pizza to Aya
(b) Aya the pizza
(c) it to Aya
いかがでしょうか。
実は文法的に正しい、と考えれば「(a)(b)(c)いずれも正解」です。
が、
もっとも自然に聞こえるのは(c)のみで、(a)(b)はどちらもここでは不適切です。
クイズの解説
これは文法知識だけを押さえていても実際に役に立たない典型的な例です。
give(与える)は
「誰に何を与えるのか」を示す動詞で、
次のように2パターンの形があります。
give O1[人]+O2[物](O1にO2を与える)
= give O[物] to+人(〜にOを与える)
2パターンがあるから、お好みで、というわけにはいきません。
まず英語には文末焦点の考え方があります。大切な情報は最後というルールです。
大切な情報というのは基本的に情報価値がある「新情報」を指します。
giveの場合、「人」と「物」の2つの情報を示しますから、
どちらの情報が聞き手にとって新しいのか(情報価値があるのか)によって
語順を変えるというのが自然な発信方法になるわけです。
ではクイズの例文を改めてチェックしましょう。
Hey, where’s my pizza? – Oops, I gave it to Aya.
ここでは「僕のピザ」と「ピザの行き先であるAyaさん」
という2つの情報があります。
my pizzaは既知情報ですから、
それよりもwhereの答えに当たる新情報に
聞き手は関心があるわけですから
Ayaを文末に置いた(c)が正解となります。
また同じ言葉の繰り返しは避けるために、
同じ名詞は代名詞に変換されますので、
the pizzaよりも代名詞itのほうが自然です。
余談ですが、このパターンの練習のために、
学生向け問題集の中には、未だに次のような機械的な書き換え問題が多くあります。
- 同じ意味になるように、( )に適切な単語を入れましょう。
(A) I gave her a nice present yesterday.
(B) I gave a nice present ( ) ( ) yesterday. 答: to her
「前置詞to」が必要であるという型を覚えてもらう意図を感じますが、
それよりも「なぜ言い換える必要があるのか」
「英文(A)と(B)の違いは何なのか*」
には焦点が当たっていません。
- 前置詞toの有無が違いである、というのは、
厳しいようですが、浅い捉え方です。
このように英文法の理屈だけを覚えても実際の会話には使えません。
話し手の場面・状況・気持ちや単語と単語の自然なつながりを意味する
コロケーションなどに焦点を置き、日常英会話に紐付けながらの英文法学習であるべきです。
(詳しくはまた後日整理したいと思います)
「英文法」+「語い」「定型表現」
ここまで英文法を熱く語っておいて、なんですが、
もちろん文法知識だけでは話すことは不可能です。
自分の気持ちを表現するためのある一定量の「語い」と
コミュニケーションを円滑に進める「定型表現」(決まり文句、フレーズ)、
そして最終的にコミュニケーションの場では言葉を「音」にして発信しますから、
相手が理解できるだけの「適切な発音」を身につける必要があります。
この3つのバランスが大切です。
「文法」がなければ「語い」「定型表現」を覚えても
状況に応じた柔軟なアレンジができません。
例えば、
英単語に「名詞」「形容詞」「副詞」
といった品詞がありますが、
品詞がその単語の「使い方」を教えてくれるわけで、
日本語訳と綴りだけを教えても発信できません。
品詞の働きを文法的にまずは理解する必要があります。
また、巷に溢れる英会話本に掲載されているフレーズを丸暗記したところで、
丸暗記した通りの形で実際のコミュニケーションの場で使えるとは限りません。
つまり、部分的に単語の入れ替えや適切な時制の変更などが
リアルの会話で必要になるわけですが、
こうした対応力も英文法の知識で養えるわけです。
「英文法」「語い・フレーズ」「発音」を1セットにして
まずは押さえる必要があるわけですね。
いずれにせよ、
「Input(知識の入力)なきOutput(知識の利用・発信)はない」
ことを意識してください。
さて次回は、スピーキングに必要な英文法がどういったものなのか、
をもう少し整理した上で、
英文法定着度を確認するクイズにもチャレンジしていただきます。
それではまた